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サンセット・サンライズ

東北の海と人が癒す都会人の心

公開年:2024 年

原題:サンセット・サンライズ

上映時間 139 分

制作国:日本

監督:岸善幸

出演:菅田将暉, 井上真央, 竹原ピストル

ストーリー:

悲しみの先に笑顔を見つける人々の姿に胸打たれる、温かな人間ドラマと復興への祈り。

Rottenn Tomatos評価

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映画レビュー

📌 この映画の注目ポイント
・岸・宮藤・菅田の黄金トリオ
・震災後の南三陸を繊細に描写
・笑いと涙が絶妙なバランス
・菅田将暉の新境地となる演技
・東北の食と自然の魅力満載

🎯 こんな人におすすめ/向かないかも
・おすすめ:
 地方移住に興味がある都会人
 宮藤官九郎の人間ドラマファン

・向かないかも:
 ハイペースなアクション好き
 複雑な物語展開を求める人

📱 映画の基本解説
『サンセット・サンライズ』は、コロナ禍の2020年、リモートワークを機に三陸の町へ”お試し移住”した東京のサラリーマン・晋作(菅田将暉)と地元住民との交流を描いた作品です。

楡周平の小説を原作に、『あゝ、荒野』の岸善幸監督と宮藤官九郎の脚本タッグが実現。

本作は単なる「田舎暮らしコメディ」ではなく、東日本大震災後の東北の姿と、そこに生きる人々の回復力を優しく描きながら、現代社会における「生き方」「人とのつながり」を問いかけています。

企画・プロデュースの佐藤順子氏が「コロナ後に変わってしまった地方の姿」に触発されて生まれた本作は、震災後10年以上が経過した東北の今と、都会と地方の新しい関係性を模索する物語になっています。

🎥 映像美と演出のポイント
岸善幸監督の手腕が冴える本作の映像美は特筆に値します。
三陸の海と山の壮大な風景が、今村圭佑の撮影によって繊細かつダイナミックに捉えられています。

特に釣りのシーンでは、海面に光が差し込む瞬間や魚が水面を跳ねる様子が詩的に表現され、晋作の心の解放感と重なります。

また、地元の食文化や日常生活を丁寧に切り取るカメラワークも印象的です。

宮藤官九郎が「自分の書いた映画で、こんなに食べるものが出てくるのは初めて」と語るように、どんこ汁などの郷土料理を堪能するシーンは食欲をそそりながらも、そこに込められた地域の歴史や人々の思いを伝えています。

岸監督は初めてのコメディ作品に挑戦していますが、笑いのシーンと震災の記憶が交錯する場面の繊細な切り替えが、作品全体に独特のリズムと深みを生み出しています。

晋作が徐々に地元に溶け込んでいく過程を、季節の移ろいとともに描く時間表現も見事です。

🎭 脚本と演技の見どころ
宮藤官九郎の脚本は、宮城県出身である自身の経験を活かしつつ、震災後の東北に対する「ずっとモヤモヤしていた」思いに一つの答えを提示しています。

特に「よそ者」と地元民の衝突と融合を描く対話は、方言の妙も相まって笑いを誘いながらも、互いを理解していく過程が感動的です。

菅田将暉は「悲しみの先に笑顔を作ろうとする人たち」を演じることで、新たな演技の幅を見せています。

都会のサラリーマンから徐々に変化していく細やかな表情の変化や、釣りに夢中になる無邪気な表情、地元の人々との温かな交流シーンでは、菅田の持つ多面的な演技力が遺憾なく発揮されています。

井上真央演じる地元の女性キャラクターとの関係性も見どころの一つ。
二人の繊細な心の動きが、言葉以上に表情や仕草で伝わってくる演技は、両者の実力を証明しています。

また、竹原ピストル、山本浩司らが演じる個性豊かな地元民たちの存在感も光ります。

🎵 音楽と音響効果
網守将平が手がける音楽は、都会のリズムと東北の自然音が融合した独特の世界観を創り出しています。

海の音、釣り糸が水を切る音、波の音など、自然音が効果的に使われており、都会の喧騒から逃れて自然に身を委ねる晋作の心境変化を聴覚的にも感じさせる工夫が随所に見られます。

👁️ 共感ポイント
晋作が地元の祭りに参加するシーンでは、。初めは戸惑っていた彼が、徐々に地域の人々と心を通わせ、その土地の記憶と喜びを共有していく姿に、人間の持つ適応力と繋がりの大切さを感じさせます。

また、「4LDK・家賃6万円の神物件」という現代の都会人が抱く地方への憧れと現実のギャップを、笑いに変えつつも誠実に描いている点も秀逸です。

コロナ禍をきっかけに生き方を見直した多くの人々に共感を呼ぶでしょう。

🎬 制作裏話と小ネタ
菅田将暉と岸善幸監督は『あゝ、荒野』以来7年ぶりのタッグで、撮影後に「次は笑える作品が良い」と話していたことが実現した作品です。

菅田は「撮影現場は笑顔でいっぱいだった」と振り返っており、画面からもその楽しさが伝わってきます。

宮藤官九郎は自身の地元である宮城県を正面から描くのは初めてだったと語っています。

また、どんこ汁を美味しそうに食べる菅田の演技については「自分の映画じゃないみたい」と驚きを表しています。

撮影は実際の南三陸で行われ、地元の方々もエキストラとして多数参加していることも本作の魅力を高めています。

🔮 関連作品のおすすめ
本作を楽しんだ方には、以下の作品もおすすめです:

『あゝ、荒野』(2017):同じ岸善幸監督・菅田将暉主演の作品で、こちらはより重厚な人間ドラマ。本作との対比で監督と俳優の幅広い表現力を感じられます。

『真夏の方程式』(2013):同じく地方の海辺の町を舞台にした作品。ミステリー要素が強いですが、都会からやってきた人物と地元民との交流という点で共通点があります。

『リトル・フォレスト』(2014-2015):都会から田舎に戻ってきた主人公が食や自然との関わりを通じて自分を見つめ直す物語で、地方生活の豊かさを描く点が共通しています。

📝 まとめ
『サンセット・サンライズ』は、東日本大震災から10年以上が経過した東北と、コロナ禍で価値観が変化した現代日本の姿を、笑いと涙を交えて描いた温かな人間ドラマです。

岸善幸監督、宮藤官九郎脚本、菅田将暉主演という豪華クリエイターによる本作は、地方移住や人とのつながりといった普遍的なテーマを、南三陸という具体的な舞台で丁寧に紡いでいます。

単なる「田舎暮らしの理想化」に陥らず、その困難さも含めて描きながら、それでも人と出会い、自分の「好き」を大切にする生き方の尊さを伝える本作は、見終わった後に温かな余韻と、少しの勇気を与えてくれるでしょう。

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