ジム・ブロードベントが演じる平凡な退職者ハロルドの、800キロに及ぶ予期せぬ旅を描いた心温まる作品です。

ヘティ・マクドナルド監督は、イギリスの美しい田園風景を背景に、人生の終盤における自己発見と再生のテーマを繊細に描き出しています。

古い友人からの手紙をきっかけに旅に出たハロルドの物語は、現代社会が失いつつある人間性の回復を象徴する深い寓話となっています。

ブロードベントは、無口で内向的な主人公の微妙な感情の変化を、水彩画のように繊細に表現し、奥さんとの夫婦関係の変化も見事に演じています。

高齢化社会において、人生の意味と人間関係の大切さを問いかけると同時に、独特の英国的ユーモアと繊細な人間描写により、世代を超えて多くの人々の心に響く作品になっています。

心に残る歩く系のロードムービーとしては、「星の旅人たち」「ロング・トレイル」「サン・ジャックへの道」「ストレイト・ストーリー」（歩くスピードのトラクターですが…）などがおススメです。