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マノン

欲望に揺れる運命の旋律

公開年:1981 年

原題:マノン

上映時間 108 分

制作国:日本

監督:東陽一

出演:烏丸せつこ、津川雅彦、佐藤浩市

ストーリー:

 愛と欲望に翻弄される女性の数奇な運命を描く。

Rottenn Tomatos評価

iMDb評価

Filmarks評価

運営評価

映画レビュー

🌟 1. 本作の魅力:注目ポイント3選

  1. 烏丸せつこの鮮烈な存在感

    主演の烏丸せつこが見せる、大胆かつ繊細な演技が光ります。自由奔放さと危うさを併せ持つヒロイン像を体当たりで表現。
  2. 時代を映す現代的翻案

    原作はフランスの古典『マノン・レスコー』ですが、舞台は80年代日本のバブル前夜。
    高度経済成長期後の空気感を背景に、普遍的なテーマを現代的に解釈し愛と金の問題を描きます。
  3. 男優陣のキャリア転換点

    津川雅彦は本作で初めて「ゲス男」キャラを演じ、以降の悪役専門路線の礎を築きました。

    佐藤浩市のデビュー作(この年に2本出演)でもあり、21歳の瑞々しい演技が「純粋なる欲望」を象徴しています。
    ビートたけしの初期出演作(この年に、初めて映画に数本出演)としても資料的価値があります。

👤 2. こんな人におすすめ

おすすめ

  • 80年代日本映画やサブカルチャーの雰囲気が好きな方
  • 烏丸せつこ、佐藤浩市など当時の若手俳優の輝きを見たい方
  • 文学作品の現代的な映画化に興味がある方
  • 人間の愛憎や欲望を描いた、少しビターな物語が好きな方

⚠️ 注意点

  • 性的な描写が含まれます
  • 物語の結末は原作同様、ややアンハッピーな側面を持ちます
  • 古典的な恋愛物語を期待すると、少し違う印象を受けるかもしれません

🧠 3. 物語とテーマの深掘り

あらすじ

劇団研究生のみつこ(烏丸せつこ)と若い男・中川(佐藤浩市)は恋に落ちますが、彼女は贅沢な暮らしを求め、教師・サラ金業者など裕福な男たちとの関係を繰り返します。
複雑に絡み合う人間関係と、愛と欲望の間で揺れ動く姿を描いています。

テーマ分析

本作は、18世紀フランスの古典を巧みに現代日本へ移し替えました。
1980年代という、物質的な豊かさが追求された時代を背景に、愛の価値や、女性の自立と依存というテーマを探求しています。

構造

物語は、マノンの視点を中心に進行し、彼女の内面の変化を丁寧に描写しています。​
時間軸は直線的でありながら、回想シーンを効果的に挿入することで、物語に深みを加えています。

🎬 4. 演出と技術の評価

映像表現

東陽一監督らしい、リアリティと詩情が同居する映像が印象的です。

当時の街並みや風俗を捉えたロケーション撮影が効果的で、光と影のコントラストがマノンの内面の複雑さを暗示します。

音響設計

音楽は、物語の持つ情熱的で刹那的な雰囲気を高めています。
荒木一郎のジャズ調サウンドトラックが、性の戯れと暴力の瞬間を不気味に繋げています。

美術・衣装

80年代の日本の風俗を反映した美術セットや小道具が目を引きます。
特にマノンの衣装は心情や状況の変化を象徴的に表し、華やかなドレスから質素な服装まで、その変遷が物語性を深めます。

象徴的なシーンの演出

マノンが奔放に振る舞うシーンの数々は、解放感と同時に危うさを感じさせます。

高級車に乗る場面や、パーティーでの様子など、明るい照明やアップテンポな音楽で華やかながら、どこか空虚さも漂わせる演出が、テーマ性を際立たせています。

🌍 5. 海外の視点と製作の舞台裏

海外メディア・批評家の評価

本作『マノン』は、日本国内で高く評価され、特に烏丸せつこは報知映画賞主演女優賞を受賞しています。

海外での評価については、2013年のデジタルリマスター版上映時にカンヌ国際映画祭で「東洋的ニヒリズムの傑作」と再評価され、仏『カイエ・デュ・シネマ』誌は「マノン・レスコーの精神的なリメイク」と称賛しています。

製作エピソード

監督の東陽一は社会派ドキュメンタリー出身で知られ、本作でフランス古典文学を現代日本に大胆に翻案しました。
即興演技の多用が脚本の硬直性を打破したという裏話もあります。

日本国内の評価との比較

国内ではキネマ旬報ベストテン入りするなど批評的に成功しましたが、「道徳的に問題あり」との批判もありました。

🔗 6. 関連作品レコメンド

同ジャンル/テーマ

  • 赫い髪の女』(1979年)
    神代辰巳監督作。情念と業を描く点で比較されることがある
  • 恋のマノン』(1967)
    同原作のカトリーヌ・ドヌーヴ主演版

同監督作

  • サード』(1978年)
    東陽一監督の代表作の一つ。
    少年院を舞台にした青春映画
  • 四季・奈津子』(1980年)
    五木寛之原作で、本作と同じく烏丸せつこ主演作品

🤔 7. 感想

『マノン』は、80年代日本の熱気をまとった鮮烈な愛のドラマです。
何よりも、烏丸せつこが放つ、危うくも魅力的な輝きが作品を牽引しています。

原作の古典的テーマを、現代社会に接続した東監督の手腕は見事で、単なる恋愛劇ではなく、時代の空気や社会への問いかけを含んでいます。

チラシ的にみると、”死”と”生”を表裏で表していますが、ネタバレしかねない表面ですし、裏面には烏丸せつこのヌードシーンが入っています。

今どき、こんなチラシが作られることは無いでしょうから、これ自体が一つの時代を表していますね。

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