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崩壊と再生、ネオ東京の黙示録

アキラ

公開年:1988 年

原題:アキラ AKIRA

上映時間 124 分

制作国:日本

監督:大友克洋

声の出演:岩田光央、佐々木望

Rottenn Tomatos評価

91%

iMDb評価

Filmarks評価

運営評価

レビュー

1. 本作の魅力:注目ポイント

 

  • 圧倒的な映像革新技術
    日本アニメ史上最高水準の作画品質。
    手描きセル画で実現した驚異的なディテールです。

  • 預言的な未来描写
    1988年作品ながら、2019年ネオ東京五輪開催設定が現実と一致。
    破壊と復興を描いた物語が現代社会に警鐘を鳴らします。

  • 世界基準のSF表現
    描きこまれたネオ東京は、海外で「ブレードランナーを超えた」と評価されるほどです。

2. こんな人におすすめ

✅ おすすめ

  • サイバーパンクやSFアニメが好きな方。
  • 緻密なアニメーションや美術表現を味わいたい方。
  • 海外でも高評価の作品を好むSFファンや映画通の方。
  • 視覚的インパクトを求める方。
⚠️ 注意点

  • 暴力描写やグロテスクなシーンが苦手な人は注意。
  • 複雑な設定や抽象的な展開に戸惑うかもしれません。
  • 原作と映画のストーリーの違いが気になる方。

3. 物語とテーマ

📝 あらすじ

第三次世界大戦後の、2019年ネオ東京。
暴走族の少年・金田と鉄雄は、不思議な能力を持つ少年タカシと遭遇。

鉄雄は軍に連れ去られ、そこで超能力が覚醒することに。

 

💭 テーマと構造

人間の進化と力の暴走、権力の腐敗、アイデンティティの喪失を描きます。

物語は少年たちの友情と対立、都市の崩壊と再生を軸に展開し、多層的なテーマが深い問いを投げかけます。

 

4. 映像・音響表現と演出

 

緻密に描き込まれたネオ東京の街並みや、金田のバイクが疾走するシーンの流れるようなカメラワークは圧巻です。

色彩は鮮やかでありながらも、退廃的な雰囲気を醸し出し、作品の世界観を際立たせています。

 

5. 製作エピソード

 

『AKIRA』の製作は1985年に始まり、総製作費10億円という当時の日本アニメーション史上最高額を投じた一大プロジェクトでした。

大友克洋監督は自身の漫画連載中にもかかわらず、映画化を決断。
(そのため、アニメとコミックはエンディングが違っています)

革新的だったのは「プレスコ」方式の採用です。
通常の日本アニメでは映像に後から音声を合わせる「アフレコ」が主流でしたが、本作では先に声優の演技を録音し、その音声に合わせて作画を行いました。

この手法により、キャラクターの口の動きが極めて自然になり、感情表現の幅が大幅に向上しました。

大友克洋監督は、原画からレイアウトまで自ら手掛け、アニメーション作家として作品全体を統括するという、宮崎駿監督の仕事にも通じる徹底した制作スタイルを貫きました。

24万枚のセル画を使用し、320色という通常の倍以上の色数を採用することで、圧倒的な映像美を実現しました。

また、大友監督は製作当初から海外展開を意識しており、「日本のアニメを世界基準に引き上げたい」と語っていました。

そのために、製作期間に3年をかけ、日本中から一線級のアニメーターを結集させました。

背景美術にも実写映画レベルの精密さを要求し、ネオ東京の街並みは実在する東京の建築物を参考に、未来的なアレンジを加えて描かれています。

音楽面では、芸能山城組を起用し、従来のアニメ音楽とは一線を画す民族音楽的アプローチを採用。

この音響設計により、作品に独特の緊張感と神秘性を付与することに成功しました。

 

6. 国内外の評価

 

🌎 海外メディアの評価

 

Rotten Tomatoesでは91%の評価を獲得し、Metacriticでは68点いう好評価を得ました。

Varietyは「アニメーションの新たな地平を切り開いた」と絶賛、IndieWireは「サイバーパンクの金字塔」と評し、特に映像美とテーマ性が高く評価されています。

Roger Ebertは映像美を絶賛し、1989年に本作を「Video Pick of the Week」に選出し、2001年の再公開時には「Thumbs Up」評価を与えています。

Empire誌の「史上最高の映画500本」で440位にランクイン。Channel 4の「史上最高のカートゥーン100選」では16位を獲得するなど、様々なメディアで高く評価されています。

スティーヴン・スピルバーグ監督は、自身の映画『レディ・プレイヤー1』で金田のバイクを登場させ、「『AKIRA』はすごい作品」と絶賛しています。

また、人気ドラマ「ストレンジャー・シングス」のクリエイターであるダファー兄弟や、世界的ミュージシャンのカニエ・ウェスト、ファレル・ウィリアムスなども『AKIRA』から影響を受けていることを公言しており、その影響力は映画界に留まらず、音楽やファッションといった多岐にわたる分野に及んでいます。

 

🇯🇵 日本国内の評価

 

国内では公開当初「背景描写のリアリティ」「演出の緻密さ」が高く評価されました。

興行収入約7.5億円は制作費を下回ったものの、伝説的ヒットとなり、同年の国内人気ランキングでも4位にランクインしています。

 

7. レビューと関連作品

 

💯 レビュー

 

『AKIRA』は、単なるエンターテイメント作品を超え、アニメーション芸術の新たな地平を切り開いた作品と言えます。

手描きセル画の限界に挑戦した映像技術は、現在のデジタルアニメーションにも影響を与え続けています。

また、超能力という抽象的概念を視覚化した演出手法は、後のSFアニメの表現基準となっています。

一方で、複雑なストーリー展開には理解しにくい部分もありますが、この映像と音楽だけでも十分体験する価値のある作品です。

ただ、残念なのは数年前に発表されたハリウッド実写製作が、無期限延期(事実上の中止)となっていること。

一時は、ジョーダン・ビール監督や、レオナルド・ディカプリオの名前なども上がっていました。

しかし、日本のVFX界も格段の進歩を遂げていますし、世界的に見ても演出力のある監督も出てきています。
是非、世界配給を視野に入れて、オールジャパンで実写化してもらいたいものです。

🍿 関連作品レコメンド

 

同ジャンル/テーマ

 

  • 『攻殻機動隊』(1995)
    サイバーパンクSFの傑作。大友作品同様、哲学的テーマを含んでいます。

  • 『ブレードランナー』(1982)
    未来都市と人間のアイデンティティを描く、映像美と世界観が似ています。

同監督作

  • 『MEMORIES』(1995)
    大友克洋監督によるオムニバス形式のSFアニメ。実験的な映像表現と多様なテーマが特徴です。

  • 『スチームボーイ』(2004)
    16年ぶりの長編監督作。緻密なメカ描写と壮大な物語が展開されるスチームパンク作品です。

🔗 参考文献・リンク

  • AKIRA 4Kリマスター公式サイト
  • Rotten Tomatoes – AKIRA評価ページ
  • Metacritic – AKIRA批評集
  • シネマトゥデイ – AKIRA技術解説記事
  • 映画チャンネル – AKIRA解説記事
  • MOVIE WALKER PRESS: 氷川竜介が語る、『AKIRA』の制作過程
  • MOVIE WALKER PRESS: 『AKIRA』が世界のクリエイションに与えた絶大なる影響
  • Real Sound: 『AKIRA』はなぜ映画と漫画で異なるエンディングに? 

🔄 更新情報
更新:2025年6月12日 – 初版作成

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