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レビュー
1. 本作の魅力:注目ポイント
- 子どもの視点から描く家族感情
7歳の少女ソルの目線で描かれる大人たちの複雑な状況や心境。 - ドキュメンタリー的リアリズム
手持ちカメラ、自然光、即興的演出で、ドキュメントのような生活感と臨場感を演出しています。 - 95分で完結する人間ドラマ
比較的、短い上映時間ながら、生と死、希望と絶望が巧みに織り込まれています。
2. こんな人におすすめ
✅ おすすめ
- 家族の絆を扱った人間ドラマを好む映画ファン。
- 子供の視点から描かれる物語が好きな方。
- 静謐で詩的な映像表現を求める方。
⚠️ 注意点
- テンポの速いエンタメ映画を求める方。
- テンポ控えめで間接的描写が多いので、じっくり鑑賞する集中力が必要です。
- 重いテーマを扱うため、気軽に楽しむには適しません。
3. 物語とテーマ
📝 あらすじ
7歳の少女ソルが、病気で療養中の父の誕生日パーティーのため、祖父の家を訪れる夏の一日。
家族が準備に追われる中、ソルは大人たちの微妙な変化に気づいていきます。
💭 テーマと構造
本作は、死を目前にした家族の「生」の輝きを描いています。
7歳のソルの視点を通して、家族それぞれの感情や、死を受け入れる過程が静かに描かれます。
パーティーという日常の出来事の中に、人生の普遍的なテーマが凝縮されています。
4. 映像・音響表現と演出
メキシコの日常風景を詩的に切り取った映像が特徴です。
自然光を巧みに利用した柔らかな色彩と、登場人物の表情を捉える繊細なカメラワークが、作品全体に温かみとリアリティを与えています。
特に、カメラは子どもの目線の高さを意識し、ソルの心理状態と同調する視覚的効果を生み出しています。
音響面では、家族の会話や生活音、そして自然の音が丁寧に拾われ、観客を物語の世界に引き込みます。
5. 製作エピソード
リラ・アビレス監督は本作について「人生について描きたかった」と語り、母親になった経験が創作の原動力となったと述べています。
監督は自身の娘への贈り物として「Tótem」というタイトルを思いついたと明かしており、母娘関係への愛の表現でもあると説明しています。
撮影は実際のメキシコシティの住宅で行われ、アビレス監督は「家の隅々まで歴史が詰まった場所を見つけることが重要だった」と述べています。
主演のナイマ・センティエスは映画初出演でありながら、監督は彼女の自然な演技力を高く評価。
「演技を操作するのではなく、その場に存在することの美しさを大切にした」と、アビレス監督は制作過程を振り返っています。
アンサンブルキャストの選定では、実際の家族のような自然な関係性を重視し、長期間のリハーサルを通じて俳優同士の絆を深めました。
2024年3月には国際女性デー65周年を記念したロールモデルプログラムに、ヘレン・ミレンやカイリー・ミノーグらと共に選ばれ、リラ・アビレス監督を模したオリジナルのバービー人形が、マテル社から贈られるという異例の栄誉も受けています。
6. 国内外の評価
🌎 海外メディアの評価
Rotten Tomatoesでは97%の高評価を獲得しています。
Metacriticでは91/100の平均スコアを獲得しており、これは「普遍的な絶賛」を示しています。
The Hollywood Reporterは「騒がしく、喜びに満ち、物語の中心にある多世代の祝宴のように疲れるが、95分の映画としては強烈な印象を残す」と評価。
Varietyは「感情豊かで生活感あふれる家族の集まりを描いた親密な作品」と評価しています。
Rolling Stoneは「メキシコ映画の傑作」と称し、「死、人生、悲しみ、喜びについてのドラマ」として評価しています。
The New York Timesのマノーラ・ダルジス批評家は「今年見るべき最高の映画の一つ」と絶賛し、Critic’s Pickに選出しました。
Los Angeles TimesのJustin Changも「絶妙で感情的に圧倒的なドラマ」と評価し、「アビレスが深さと感情の力であなたを引き込む」とコメントしています。
New Yorker の Anthony Lane は「悲劇のはずが、驚くほどユーモラス」と指摘、TIME誌は「ソルの表情に焦点を当て、言語化し難い感情を映像化した」と評しています。
Loud And Clear Reviewsでは「限られた室内空間で人間のつながりと衝突を見つけ出す、専門的に作り上げられた家族ドラマ」と評しています。
第73回ベルリン国際映画祭では国際コンペティション部門でプレミア上映され、エキュメニカル審査員賞を受賞。
その後20以上の国際映画祭で賞を受賞し、全米映画批評委員会により2023年トップ5国際映画の一つに選ばれ、第96回アカデミー賞国際長編映画賞のメキシコ代表作品にも選出されました。
🇯🇵 日本国内の評価
メキシコ文化の描写の豊かさと、普遍的な家族愛のテーマが日本の観客にも深く響くと評されましたが、海外での絶賛に比べて、比較的静かな公開となりました。
7. レビューと関連作品
💯 レビュー
アビレス監督は、家族の愛と死をテーマにした普遍的な人間ドラマを、メキシコ独特の文化的背景の中で見事に描き上げています
95分という短い上映時間の中に、生と死、愛と別れの重層的なテーマを、見事に織り込んだ脚本力は特筆すべきものです。
🍿 関連作品レコメンド
同ジャンル/テーマ
- 『モンスーン・ウェディング』(2001)
同じく大家族の集まりを描く群像劇。 - 『ツリー・オブ・ライフ』(2011)
テレンス・マリック監督作品。
子どもの視点から描く家族ドラマの構造が類似。
同監督作
- 『ザ・チェンバーメイド』(2018)
リラ・アビレス監督の長編デビュー作。
女性の視点から労働と尊厳を描いています。
🔗 参考文献・リンク
映画.com『夏の終わりに願うこと』公式サイト
Variety Review
The Hollywood Reporter Review
Rotten Tomatoes
Tótem Reviews – Metacritic:
🔄 更新情報
更新:2024年6月12日 – 初稿作成