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愛は記憶よりも深い場所に宿る

エターナルメモリー

公開年:2024 年 ( 製作年:2023 年 )

原題:La memoria infinita/The Eternal Memory

上映時間 85 分

制作国:チリ

監督:マイテ・アルベルディ

出演:アウグスト・ゴンゴラ、パウリナ・ウルティア

🏆2023年サンダンス映画祭:ワールド・ドキュメンタリー部門 審査員大賞受賞

Rottenn Tomatos評価

92%

iMDb評価

Filmarks評価

運営評価

レビュー

1. 本作の魅力:注目ポイント

 

  • ドキュメンタリーの新境地
    被写体との、深い信頼関係から生まれる親密な映像体験が魅力です。

  • 深い愛と記憶の物語
    アルツハイマーを患う夫と支える妻の25年間の愛の軌跡を描きます。

  • 芸術的完成度
    確かな映像表現と構成力が光ります。

2. こんな人におすすめ

✅ おすすめ

 

  • 人生の深みを求める方。
    夫婦愛の本質を静かに見つめる作品です。

  • ドキュメンタリー映画が好きな方。
    飾らない日常を切り取った映像は、観る者に深い共感と考察を促します。

  • 人生や老いについて考える方。
    アルツハイマーという病を通して、人生の終盤における尊厳や家族のあり方を深く見つめ直すきっかけとなります。
⚠️ 注意点

 

  • 認知症の描写に抵抗がある方。
    認知症の進行を描くため、同様の経験をお持ちの方には、心理的負担となる可能性があります。

  • 静謐なペースです。
    85分間、穏やかで瞑想的な時間が流れるため、刺激的な映画を求める方には向きません。

  • チリの歴史に関心がない方。
    チリの独裁政権時代の話が背景にありますので、歴史的文脈を知らないと少し難解な部分があります。

3. 物語とテーマ 

📝 あらすじと概要

アルツハイマー病と診断された著名なジャーナリスト、アウグスト・ゴンゴラと、彼を献身的に支える妻で国民的女優のパウリナ・ウルティアの25年間の夫婦生活を追ったドキュメンタリーです。

記憶が日々失われていく中で、二人がどのように愛と尊厳を保ち続けるかを描きます。

💭 テーマと構造

中心テーマは「記憶とアイデンティティ」「愛と献身」です。

映画は、ホームビデオのような親密な映像と、アウグストがジャーナリストとしてチリの歴史を記録してきた、過去の映像を織り交ぜながら、記憶の喪失と再生という普遍的なテーマを深く掘り下げています。

 

4. 映像・音響表現と演出

本作の映像は、アウグストとパウリナの日常に寄り添う、親密で自然なスタイルが特徴です。

ホームビデオのような温かみのある映像は、夫婦の絆の深さを際立たせ、観る者に強い共感を呼び起こします。

音響もまた、過度な演出を避け、生活音や会話を丁寧に拾い上げることで、ドキュメンタリーとしてのリアリティを高めています。

 

5. 製作エピソード

 

アウグスト・ゴンゴラは、ピノチェト軍事政権下で言論の自由を守った著名ジャーナリストで、数十年にわたって政治・文化報道に携わってきました。

そのため、アウグスト自身が「記録すること」の意義を重視し、病状進行後も撮影を続けることに同意しました。

一方、パウリナ・ウルティアは国民的女優として活躍後、チリ初の女性文化大臣を務めた文化界の重要人物です。

二人の出会いは文化イベントでの取材がきっかけで、知的な会話から恋愛関係に発展したエピソードも、映画の中で語られています。

マイテ・アルベルディ監督は『83歳のやさしいスパイ』でアカデミー賞にノミネートされた後、より親密で個人的なストーリーを求めていました。

監督は以前からパウリナの友人であり、アウグストの病気が進行する中で、この夫婦の物語を記録することの重要性を感じていたと語っています。

アルツハイマー患者を被写体とするため、撮影には特別な倫理的配慮が必要でした。監督は撮影前に医療専門家と相談し、アウグストの状態に応じて撮影スケジュールを柔軟に調整しました。

また、パウリナが撮影の可否を常に判断できる環境を整え、撮影チームは監督、撮影監督、音響技師の3名という少人数体制にして、夫婦のプライバシーを最大限尊重したとのことです。

撮影は約4年に及び、夫婦の日常や歴史的アーカイブを交えながら進行しました。

2023年1月21日のサンダンス映画祭でワールドプレミアを飾り、グランプリを受賞したことで国際的な注目を集めました。

その後、カンヌ映画祭やトロント国際映画祭など主要な映画祭で上映され、各国の配給会社から熱烈なオファーを受けました。

 

6. 国内外の評価

 

🌎 海外メディア評価

 

欧米のドキュメンタリー専門メディアからは絶賛されています。

The Guardianでは、監督の繊細な演出が称賛されました。また、全米映画批評会議(National Board of Review)では、2023年トップ5ドキュメンタリーに選出されています。

Rotten Tomatoesでは、批評家支持率92%、観客スコアが93%という驚異的な数字を記録、特に「愛の普遍性」と「視覚詩としての完成度」が評価ポイントとして挙げられています。

 

🇯🇵 日本国内評価

 

公開時から口コミで評判が広がりました。
「キネマ旬報」では「ドキュメンタリーの新しい可能性を示した作品」として高く評価され、日本映画ペンクラブでも推薦作品に選出されました。

海外評価と比較すると、日本では特に「高齢化社会への示唆」という側面が重視される傾向があり、社会問題としての認知症ケアへの関心と結びついた議論が行われています。

 

7. レビューと関連作品


💯 レビュー


アルツハイマー病という重いテーマを扱いながら、絶望ではなく希望を描く監督の視点が見事です。

映像の美しさと音響の繊細さが相まって、深い余韻を残します。

同時に本作は、単なる闘病記ではありません。個人の記憶の喪失と、国家が経験した歴史的記憶の忘却という、二つのテーマを巧みに織り交ぜています。

 

🍿関連作品レコメンド


同ジャンル/テーマ

  • 『アリスのままで』(2014)
    アルツハイマー病を患う言語学者の物語。
    こちらは劇映画として同テーマを描いた名作です。

  • 『ファーザー』(2020)
    認知症の父と娘の視点で描く心理劇。
    主観的な映像表現と家族の葛藤が特徴です。

同監督作

  • 『83歳のやさしいスパイ』(2020)
    老人ホームに潜入する83歳男性の物語。
    本作同様、高齢者を主人公とした温かい視点が共通しています。

🔗 参考文献・リンク {#references}

映画公式サイト: https://synca.jp/eternalmemory/
IMDb: The Eternal Memory (2023)
サンダンス映画祭公式記録
配給会社シンカ資料

🔄 更新情報
更新:2025年6月18日 – 初版作成

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