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レビュー
1. 作品概要と魅力
あらすじ
欲求不満を抱える主婦ケイトが、見知らぬ男性と情事を楽しんだ直後、エレベーター内で剃刀を持つ金髪女性にに惨殺される。
その現場を目撃した娼婦リズは、命を狙われつつ真相を追い始める。
本作の魅力
卓越した視覚演出
台詞を排した美術館の追跡劇は、カメラワークと編集のみで観る者を官能とサスペンスへ誘います。ヒッチコックへの敬意
『サイコ』の演出構造を解体・再構築し、現代的なエロティシズムとバイオレンスを融合。情緒的な音楽表現
ピノ・ドナジオの旋律は、残酷な惨劇を優美に彩っています。
2. おすすめ視聴ポイント
こんな人におすすめ
映像美を重視する映画ファン
流麗なカメラワークや分割画面など、デ・パルマ監督独自の映像魔術を堪能したい方。サスペンスの愛好家
予測不能な展開と、人間の深層心理に潜む狂気が織りなす重厚なサスペンスです。80年代の都会的空気感を好む方
ニューヨークを舞台にした、洗練されつつも退廃的な都市のムードを味わいたい方。
注意点
ショッキングな暴力描写
剃刀を用いた直接的な殺傷シーンがあり、刺激に敏感な方は注意が必要です。成人向けのエロティシズム
性的な欲求や描写が物語の核心にあり、家族での鑑賞には不向きです。時代背景への理解が必要
精神医学やジェンダーに関する描写に、1980年代特有の解釈が含まれており、現在では問題表現もあります。
3. 製作エピソード
ブライアン・デ・パルマ監督は、本作を自身の「『サイコ』に対する返答」と位置付けています。
アルフレッド・ヒッチコックの傑作が持つ「観客を欺く構造」を現代のニューヨークに移植することを構想しました。
当初、監督は実際に『サイコ』のリメイクを検討していましたが、最終的に独自の脚本を書き下ろす決断を下します。
映画史に残る「美術館での追跡シーン」は、フィラデルフィア美術館で撮影されました。
この約10分間に及ぶシークエンスには台詞が一切なく、視線と移動のみで心理的駆け引きを表現しています。
デ・パルマは、当時の最新機材であったステディカムを駆使し、滑らかな移動ショットを実現しました。
出演のアンジー・ディキンソンは、このシーンの撮影に数日間を要し、監督の細部へのこだわりに驚嘆したと後に語っています。
本作は公開前、MPAA(アメリカ映画協会)から「X指定(成人指定)」の警告を受けました。
特に冒頭のシャワーシーンやエレベーターでの殺害シーンの残酷さが問題視されました。
最終的に、シャワーシーンの陰毛描写、エレベーター殺人シーンの喉を切り裂くクローズアップ、精神科医のオフィスでの性的会話などが短縮され、R指定版が劇場公開されました。
後年、未編集版(アンレイテッド版)も発売され、現在は両バージョンが視聴可能です。
問題のシャワーシーン、当時48歳のアンジー・ディキンソンの代わりに、1977年のペントハウス・ペット・オブ・ザ・イヤーであったヴィクトリア・リン・ジョンソンがボディダブルとして起用されました。
ナンシー・アレンは撮影当時デ・パルマの妻であり、娼婦リズ役を熱演。
ゴールデングローブ賞新人賞にノミネートされる一方、ラジー賞最低女優賞にも選ばれるという明暗分かれる評価を受けました。
作曲家ピノ・ドナジオは、デ・パルマの『キャリー』に続き本作を担当しました。
サスペンスの緊張感と、孤独を表現するロマンチックな旋律を融合させ、この音楽的アプローチは、残酷な殺戮現場にさえも優雅な美しさを与えることに成功しています。
4. 国内外の評価
海外メディア評価
公開当時、その過激な内容から賛否両論を巻き起こしましたが、批評家からの技術的評価は非常に高いものでした。
製作費は650万ドルという中規模予算ながら、全米で3,190万ドルの興行収入を記録し、1980年の年間興行成績第21位という商業的成功を収めています。
RogerEbert.comは、4つ星中3つ星をつけ、「デ・パルマは純粋な映画的技術を駆使し、観客を興奮させる術を知っている。本作はヒッチコックの伝統を継承しつつ、独自の官能性を獲得している」と評しました。
Rotten Tomatoesにおいては、批評家支持率は83%を記録、「ヒッチコック的なスリルを、デ・パルマ流のスタイリッシュな暴力とエロティシズムで包み込んだ傑作」という総意が示されています。
Metacritic メタスコアは74点となっており、特に演出面での高評価が目立ちます。
Gene Siskelも4つ星中3つ星を付け、「映画史上最もエキサイティングでスタイリッシュなシーンがある」と評価。ただし「ミステリー部分はあまりにも簡単に解けてしまい、視覚的花火を距離を置いて眺めるだけになってしまう」と指摘しています。
Vincent Canby(NewYork Times)は「機知に富み、ロマンティック」で「非常に面白く、それが生々しく撮影された暴力の効果を和らげている」と評価。
一方で、National Reviewは、「本作が寛大に提供しているのは、稚拙なソフトコア・ポルノグラフィー、感覚のための感情操作、フロイト主義と下品な掛け言葉の対話、そして穴だらけの筋書きだ」と厳しく批判しています。
日本国内評価
日本では1981年に公開され、配給収入は約4億5000万円を記録しました。
当時の『キネマ旬報』読者選出ベスト・テンでは外国映画部門で上位に食い込むなど、日本の映画ファンにも強い衝撃を与えました。
現在では「スタイリッシュ・スリラー」の先駆けとしてカルト的な人気を誇っています。
5. 総合レビューと関連作品
総評
『殺しのドレス』は、ブライアン・デ・パルマ監督が、ヒッチコック的なサスペンスをベースに、長回しやスプリット・スクリーン、スローモーションといった独自の技法を駆使して、一級のサイコサスペンスに仕上げた一作で、初期の代表作となっています。
公開当時、冒頭からの官能描写に惹きつけられ、 (「シャイニング」の三輪車シーンを思わせるような)美術館でのめくるめく映像展開、そしてその後のショッキングな殺人シーンには驚かされました。
その緻密に計算された演出の数々は、公開から40年以上を経ても色褪せることがありません。
関連作品レコメンド
同ジャンル/テーマ作品
『サイコ』 (1960)
サスペンス映画の源流であり歴史的傑作。
本作との構造的な共通点を比較すると興味深いです。『氷の微笑』 (1992)
S・ストーンが一世を風靡した作品で、本作の官能とスリルに通じます。
同監督作
- 『ミッドナイトクロス』 (1982)
J・トラボルタ主演の、音を媒介にしたサスペンスで、小粒ながらもほろ苦いラストとも相まって印象に残る佳作です。 - 『ボディ・ダブル』 (1984)
『裏窓』へのオマージュ作品で、覗き見の心理を過激に描いた問題作です。
劇中のクラブシーンでは、当時物議をかもした名曲、FGTHの「リラックス」のライブがあり、これはそのままPVとしても使用されています。 - 『悪魔のシスター』 (1973)
デ・パルマ監督、初期の作品。
分割画面の使用など、その演出技法の原型が見られます。
参考文献・リンク
Roger Ebert.com、Metacritic、Rotten Tomatoes、IMDb、MovieWalker Press、MSCREEN ONLINE、Variety、AFI Catalog、Turner Classic Movies、The New York Times、キネマ旬報、The Hollywood Reporter、allcinema、映画.com、Wikipedia
更新情報
2026年1月20日: 初回投稿
2026年1月22日: 第2稿投稿

