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不屈の龍が世界を制した、武術映画の金字塔

燃えよドラゴン

公開年:1973 年

原題:Enter the Dragon

上映時間 99 分

制作国:香港、アメリカ

監督:ロバート・クローズ

出演:ブルース・リー

Rottenn Tomatos評価

88%

iMDb評価

Filmarks評価

運営評価

レビュー

1.本作の魅力:注目ポイント 

 

  • 革新的なアクション演出
    ブルース・リーの超人的な身体能力を活かしたスピード感溢れるカンフーアクション。

  • 東西文化の融合
    香港とハリウッドの技術融合。
    アジア武術をグローバルに広めた記念すべき作品です。

  • 従来のカンフー映画枠を超えた設定
    復讐と陰謀が絡み合う重厚なストーリー展開が、観客を引き込みます。

 

2.こんな人におすすめ 

 

✅ おすすめ

 

  • アクション映画ファン。
    生身のアクションの迫力と美しさを堪能できます。

  • 武術・格闘技愛好家。
    ブルース・リーの武術理念(ジークンドー)を学べます。

  • 映画史の転換点に触れたい人
    本作は西洋の観客を熱狂させ、カンフー映画を世界的なブームに押し上げた歴史的な一作です。

⚠️ 注意点

 

  • 暴力描写が苦手な方。
    格闘シーンが多く、流血表現も含まれています。

  • 古い映像技術。
    1970年代の撮影技術のため、現代の映像品質に慣れた方には物足りなさを感じる可能性があります。

  • 複雑なストーリーを求める方。
    物語の筋書きは、勧善懲悪で非常にシンプルです。
    深い伏線や複雑な人間ドラマを期待すると、物足りなく感じます。

 

3.物語とテーマ 

 

📝 あらすじと概要

 

武術家リーは、秘密情報局の依頼で武術トーナメントに参加します。
その目的は、主催者ハンの犯罪組織の内情を探ること。妹の復讐も胸に、リーは孤島に乗り込みます。

 

💭 テーマと構造

 

「水のように」という、ブルース・リー独自の武術哲学が物語の核心。

固定観念にとらわれず、状況に応じて変化する重要性を描いています。

戦いを通して武術者としての精神や名誉、家族愛、人種や文化を越えた共闘が描かれ、カンフーとスパイ要素の融合が、従来の武術映画とは一線を画しています。

 

4.映像・音響表現と演出


映像では、ブルース・リーの動きを捉える高速カメラワークと、表情を映すクローズアップが印象的です。

鏡の迷宮での戦闘シーンは、視覚的な混乱と緊張感を見事に演出しています。

音響では、ヌンチャクの風切り音や拳がぶつかる生々しい効果音が臨場感を高めます。

ラロ・シフリンの音楽は東洋的楽器とオーケストラを融合させ、東西文化の橋渡し役を果たしています。

 

5. 製作エピソード 


本作の企画は、ブルース・リーの親友でもあったプロデューサー、レイモンド・チョウと『007』シリーズを手がけたマイケル・G・ウィルソンの父ルイス・ギルバートとの出会いから始まりました。

当初、ハリウッドでは「東洋人の主役は売れない」という固定観念が支配的でしたが、ブルース・リーの『グリーン・ホーネット』での活躍と香港での人気を受け、ワーナー・ブラザースが製作を決定しました。

 

ブルース・リーは本作で俳優としてだけでなく、武術指導、脚本協力、製作にも深く関わりました。


彼は「本物の武術を映画で表現したい」という信念を持っており、撮影中も自らの哲学を随所に盛り込みました。

特に有名な「Be water, my friend(水のようになれ)」という言葉は、彼の人生哲学を表現したものです。

監督のロバート・クローズは、リーの推薦で起用されましたが、現場ではリーが実質的な監督のような役割を果たしていたと言われています。

そのロバート・クローズは「ブルースは毎日午前4時に起きて、6時間の武術トレーニングを欠かさなかった。彼にとって武術は単なる技術ではなく、人生そのものだった」と証言しています。

香港とロサンゼルスでの撮影は、文化の違いから多くの困難を伴いました。しかし、この東西の融合こそが本作独特の魅力を生み出しました。

ドキュメンタリー出身である撮影技師のギル・ハブスは、ブルース・リーの超人的なスピードを捉えるために、当時としては珍しい可変速度撮影を多用しました。

有名な鏡の間の決闘シーンは、撮影に非常に時間がかかり、多くの鏡が割れるなど、苦労の連続だったと伝えられています。

劇中で使われるコブラは毒牙を抜いたとはいえ、本物のコブラ。リーは掴むタイミングを誤り腕を噛まれて、傷を負っています。

また、後の香港映画を支えることになる、サモ・ハン、ジャッキー・チェン、ユン・ピョウらも端役・エキストラで出演してます。

 

本作は、ブルース・リーのハリウッドメジャー初主演作品であり、世界的成功を決定づける作品となるはずでした。

しかし、彼は香港での公開(1973年7月26日)の6日前、7月20日に32歳の若さで急逝します。アメリカでのプレミア公開は、彼の死から約1ヶ月後の8月19日でした。

主演スターの突然の死は、作品に悲劇的な伝説性を与え、世界中に衝撃と共にその名を刻み込むことになりました。

プロデューサーのレイモンド・チョウは「ブルースの死は、映画界にとって計り知れない損失だった。彼は東洋哲学をエンターテインメントに昇華させた真の芸術家だった」と語っています。

 

6.国内外の評価

 
🌎 海外メディア評価


The New York Timesは「雷のように早くカラフル」と絶賛。

Varietyは「東洋武術をメインストリームに押し上げた革命的作品」として評価。

The Guardianは「ブルース・リーは、ジェームズ・ディーンやマーロン・ブランドに匹敵する、神話的な存在となった」と、その文化的影響力を分析しています。

Rotten Tomatoesでは、 現在でも88%の高評価を維持し、批評家コンセンサスは「ブルース・リーのカリスマ性とアクションシーンの完成度が見事に融合した傑作」となっています。

2004年には、アメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録されています。

製作費85万ドルに対し、全世界で4億ドル(インフレ調整後20億ドル)を超える収益を記録し、アクション映画史の金字塔として語り継がれています。


🇯🇵 日本国内評価


日本では1974年の公開時から爆発的な人気を博し、特に若者層から圧倒的な支持を受けました。

『キネマ旬報』では年間ベスト10入りを果たし、「アジア映画の世界進出を象徴する記念碑的作品」と評価されました。

日本では海外以上にブルース・リーの哲学的側面に注目が集まりました。禅の思想や武道精神との共通点が多く論じられ、単なるエンターテインメントを超えた文化的現象として受け入れられました。

映画評論家・荻昌弘は「ブルース・リーは東洋の精神性を西洋に伝える文化的架け橋の役割を果たした」と分析しています。

 

7.レビューと関連作品 


💯レビュー
それまで、カンフー作品など存在しない中で、ブルース・リーという稀有な才能とその作品を観た時の衝撃は今も鮮やかです。

ストーリーはコミックレベルですが、そんな次元ではなく、武道家としてのブルース・リーのアクションと哲学は、アクション映画の枠を超えた芸術作品と言えます。

このことをのちにユン・ピョウが「ブルース・リーの映画は彼のワンマンショー。彼以外の要素は無に等しい」と語っていますが、まさにその通りでしょう。

50年経った現在でも色褪せることがなく、凌ぐ者もないこの作品は、唯一無二のクンフーアクションとして今からも見続けていかれることでしょう。


🍿 関連作品レコメンド


同ジャンル/テーマ

  • 『ドラゴン危機一発』(1971)
    ブルース・リー主演の初期作品。本作に通じる復讐劇が描かれています。

  • 『マトリックス』(1999)
    アクション映画の革新という点で共通。
    ブルース・リーの影響を受けたワイヤーアクションと哲学的要素を現代的にアレンジした作品です。

同監督作

  • 『死亡遊戯』(1978)
    リーの死により未完となったフィルムを、ロバート・クローズ監督が完成させた作品。

    クライマックスの五重塔でのファイトシーンは、リーが撮影した本物の映像で、彼のジークンドー哲学が純粋な形で表現されています。

 

🔗 参考文献・リンク

『ブルース・リー伝説』(デイヴィッド・ミラー著)
『映画の中の武術』(岡本雅史著)
IMDb Database
ワーナー・ブラザース公式アーカイブ
 Rotten Tomatoes – Enter the Dragon
 Wikipedia – 燃えよドラゴン

🔄 更新情報

2025年7月20日: 初回投稿

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