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レビュー
🌟 1. 本作の魅力:注目ポイント
- アガサ・クリスティ原作
ポワロもミス・マープルも登場しない『無実はさいなむ』の映画化作品。 - 豪華な演技陣
ドナルド・サザーランド、フェイ・ダナウェイら、個性が光る演技が見どころです。
👤 2. こんな人におすすめ
✅ おすすめ
- 本格推理小説やアガサ・クリスティ作品が好きな方。
- 重厚な人間ドラマとミステリーが融合した作品を好む方。
- 1980年代の英国映画の雰囲気が好きな方。
- 豪華キャストの演技合戦を楽しみたい方。
⚠️ 注意点
- 原作小説とは異なる結末です。
- 近年のスピーディーなミステリーに慣れていると、展開がゆっくりと感じる可能性があります。
- 登場人物が多く、人間関係が複雑です。
🧠 3. 物語とテーマ
あらすじ
裕福な一族の夫人が殺害され、養子の一人が逮捕され死刑となる。
しかし、二年後、そのアリバイを証明できる男が現れ、事件の真相を探り始める。
テーマ
「無実の証明」「家族の秘密」が中心テーマ。
一見、円満に見える家族が抱える闇や、過去の出来事が現在に影を落とす様子が繊細に描かれます。
戦後社会の抑圧や人間の弱さも重要な要素であり、殺人の動機が1950年代英国社会を色濃く反映しています。
構造
物語は探偵役の科学者の視点で進行します。
閉鎖的な家族の中で一人ひとりに聞き込みを行うことで、徐々に隠された人間関係や動機が明らかになる、古典的なフーダニット(犯人捜し)構造を取っています。
🎬 4. 演出と技術の評価
映像表現
イギリスの田園風景や古い屋敷を落ち着いた色調で効果的に捉え、霧や陰影を多用した映像は、戦後イギリスの陰鬱さや登場人物の内面の不安を巧みに表現しています。
カメラワークは静謐で、表情や視線の交錯を丁寧に映し出し、緊張感を高めています。
音楽
音楽はデイヴ・ブルーベックによるジャズが起用されていますが、イギリスミステリー映画としては異質。
映像や物語の雰囲気と噛み合っておらず、特にサスペンスシーンでのジャズは、緊張感を削ぐ要素となっています。
美術・衣装
1950年代のイギリス上流階級の生活様式が丁寧に再現され、屋敷の調度品や衣装は登場人物の社会的地位や個性を表現しています。
象徴的シーン
静かな食卓での無言の緊張感など、映像と静寂が恐怖や疑念を強調するシーンが印象的です。
派手な演出よりも、沈黙や視線の交錯がサスペンスを高めています。
🌍 5. 海外の視点と製作の舞台裏
海外評価は賛否が分かれています。
豪華キャストの演技やミステリー性は評価される一方で、原作からの改変点や音楽への批判が見られます。
Timeout.comは、「本格的な50年代ブラックスリラー」と評しています。
一方、音楽についてはVarietyなど多くの批評家が「作品の雰囲気と合わない」と指摘しています。
IMDbでも「雰囲気は良いが、音楽が台無し」との意見が目立ちます。
当初音楽はピノ・ドナッジオが担当予定でしたが、スケジュールの都合でデイヴ・ブルーベックに変更。
ブルーベックは既存の楽曲を流用し、2週間でスコアを仕上げたため、作品とのミスマッチが生じたと言われています。
日本では古典ミステリーファンを中心に認知されていますが、原作との違いや「名探偵不在」という点で、評価が分かれる傾向にあります。
🔗 6. 関連作品レコメンド
同ジャンル/テーマ
- 『ナイル殺人事件』(1978,2002)
閉鎖空間での殺人事件と豪華キャストによる、クリスティ原作作品。 - 『 そして誰もいなくなった』(1945,1975)
群像ミステリーとしての密室と、心理戦の緊張感が共通したクリスティ原作作品。
同監督作
- 『タイタンの闘い』(1981)
全く異なるジャンルで、ローマ神話を題材とした冒険ファンタジー。
🤔 7. レビュー
本作は、ドナルド・サザーランド、フェイ・ダナウェイら名優による静かな心理描写が光り、無実証明の物語を通じて家族の秘密と人間の弱さを掘り下げています。
霧や陰影を効果的に使った演出は、登場人物の内面と社会の閉塞感を巧みに映し出しています。
一方で、原作との相違点や「名探偵不在」という設定、ミスマッチな音楽は残念なところです。
古典ミステリーと人間ドラマの両方を味わいたい方には、静かに楽しめる一作といえるかもしれません。