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レビュー
🌟 1. 本作の魅力:注目ポイント
- 伊丹十三の監督デビュー作
俳優としてのキャリアが長かったのですが、商業映画監督としての第一作です。
それまでの日本映画にない斬新な視点と演出が光りました。
- ドキュメンタリータッチ
監督自身の実際の葬儀体験が基になっています。
そのため、段取りの混乱や参列者の人間模様が非常にリアルです。 - 豪華俳優陣が描く群像ドラマ
山崎努、宮本信子を中心とした実力派俳優が集結。家族や親族、近隣住民の人間模様を細やか描き、悲しみと笑いを織り交ぜた群像劇としてなっています。
👤 2. こんな人におすすめ
✅ おすすめ
- 日本の冠婚葬祭文化に興味がある方。
- 人間ドラマやヒューマンコメディが好きな方。
- 伊丹十三監督作品のファン、またはこれから触れたい方。
- 1980年代の日本の空気感を感じたい方。
⚠️ 注意点
- 淡々としたドキュメンタリー風の進行が苦手な方には合わない可能性があります。
- 葬儀という題材に、不謹慎さを感じる方もいるかもしれません。
- 家族で観ると気まずいシーン、性的な描写やブラックユーモアが含まれます。
🧠 3. 物語とテーマ
あらすじ
初めて喪主を務めることになった夫婦が、葬儀の段取りに奔走。
慣れない儀式に戸惑い、集まる親戚たちの人間模様が交錯します。
テーマ
「死」と向き合う家族の姿を通じて、日本の伝統的な儀式の意味や、悲しみの中に潜む滑稽さ、そして人間の弱さや温かさを問いかけます。
高度経済成長期を経て、伝統的な価値観が揺らぎ始めた、80年代日本社会の姿も垣間見えます。
構造
物語は、危篤の報せから葬儀を終えるまでの約3日間を、ほぼ時系列に沿って描きます。
ドキュメンタリーのような手法で観客を儀式の進行に引き込みます。
群像劇的な要素も強く、家族や親族、近所の人々の関わりが丁寧に描かれています。
🎬 4. 演出と技術の評価
映像表現
手持ちカメラを多用したドキュメンタリータッチの映像によって臨場感が増し、まるでその場にいるような感覚になります。
色彩は落ち着いたトーンで、儀式の厳粛さと家庭の温もりを同時に表現しています。
音響設計
BGMは最小限に抑えられ、生活音や沈黙が印象的です。
お経のリズムや足音、食器の音などが、会話の余白を満たし、日常と非日常の間を浮き彫りにします。
美術・衣装
伊豆の別荘や和室、仏壇など、昭和の日本家屋でロケを行っています。
生活感が漂う空間が物語のリアリティを支え、喪服や祭壇の飾り付けも細部まで時代考証がなされています。
象徴的なシーンの演出
葬儀の段取りをビデオで学習するシーンは象徴的で、伝統的な儀式が近代的なメディアを通じて伝えられるという皮肉をユーモラスに描いています。
🌍 5. 海外の視点と製作の舞台裏
海外メディアの評価
『お葬式』(The Funeral)は海外でも高く評価されています。
批評家Roger Ebertは「死を扱いながら、人生の滑稽さと温かさを感じさせる」と評しています。
「Variety」誌も「日本文化の細部を観察しながら、普遍的な家族ドラマとして成立している」と高評価です。
製作エピソード
伊丹十三監督が、義父の葬儀を実際に経験したことが本作の着想源です。
わずか1週間で脚本を書き上げたというエピソードがあります。
撮影は神奈川県湯河原町の伊丹監督自身の別荘で行われ、実際の家庭的な空気感が画面に反映されています。
また、伊丹監督と宮本信子夫妻がCMで共演した経験が、劇中のCMシーンに活かされています。
日本国内の評価
公開当初は不謹慎な題材として懸念されましたが、予想を覆す大ヒットとなりました。
第8回日本アカデミー賞最優秀作品賞、キネマ旬報ベスト・テン日本映画ベスト・ワンなどを受賞し、伊丹十三の名を一躍高めた作品です。
それまでタブー視されがちだった「死」や「葬儀」をエンターテイメントとして昇華させた点が革新的と評価されました。
🔗 6. 関連作品レコメンド
同ジャンル/テーマ
- 『おくりびと』(2008)
同じく「死」を扱いながらも、納棺師の視点からより感動的に描いています。 - 『東京物語』(1953)
家族の絆や世代間の断絶を静かに描き、日本的な情感を深く掘り下げた名作。
同監督作
- 『マルサの女』(1987)
『お葬式』の後に制作され、国税局査察官の活躍を描いた作品で、これまた大きくヒットしました。
🤔 7. レビュー
「死」という重いテーマを扱いながらも、ユーモアと温かさを忘れない傑作です。
伊丹十三監督の鋭い観察眼と俳優たちの自然な演技が、厳粛な儀式の中に潜む人間らしさを鮮やかに浮かび上がらせます。
お葬式の経験がある方は、思わず共感するシーンも多いのではないでしょうか?
もう40年も前の作品なんですね
お葬式を客観的にみつめて
コミカルで皮肉たっぷりに表現してます。伊丹監督の作品、まだまだ観たかったです