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ジャスティス

腐敗した司法と熱血弁護士の闘い

公開年:1980 年

原題:...AND JUSTICE FOR ALL.

上映時間 119 分

制作国:アメリカ

監督:ノーマン・ジュイソン

出演:アル・パチーノ、ジャック・ウォーデン

ストーリー:

ノーマン・ジュイソンが描く「正義」の欺瞞、アル・パチーノが魂を燃やす法廷の熱狂!

Rottenn Tomatos評価

78%

iMDb評価

Filmarks評価

運営評価

映画レビュー

注目のポイント

1.司法制度の矛盾と不条理に切り込んだ脚本力

バレリー・カーティンとバリー・レビンソンによる脚本は、アカデミー賞にノミネートされるほどの完成度。

法を守るはずの裁判所に蔓延る矛盾と不正を緻密に描き出し、正義とは何かを問いかける内容は、現代にも通じるテーマ性を持っています。

2.アル・パチーノ、圧巻の演技

理想主義的な若手弁護士アーサー役のアル・パチーノは、本作でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。

理想と現実の間で苦悩しながらも妥協を許さない熱血漢を熱演し、特にクライマックスでの感情爆発シーンは映画史に残る名演技でしょう。

3.70年代末のアメリカ社会を映し出す映像美

ビクター・J・ケンパーによる撮影は、ボルチモアの街並みと裁判所の雰囲気を見事に捉えています。

おすすめ層/注意点

✅ こんな人におすすめ:
・法廷ドラマ愛好家
・アル・パチーノファン
・社会派映画に興味がある方
・司法制度をテーマにした作品を好む方

⚠️ 注意点:
・アクション系の映画ファンには展開が遅く感じられるでしょう。
・1980年代の映画なので、演出や演技に古さを感じるかもしれません。

物語とテーマ

正義を信じる若き弁護士が、崩壊しかけた司法制度の中で矛盾に直面する姿を描いています。

冤罪を訴える被告人、倫理観を失った同業者、規律に縛られる裁判官たち——
正義という言葉がどれほど空虚になりうるかを、法廷という舞台で突きつけてくる作品です。

本作のテーマは「法と正義の乖離」です。ノーマン・ジュイソン監督は、形式的な法の執行に捕らわれ、本来守るべき正義から遠ざかっていく司法制度への批判を込めています。

権力の乱用、人権侵害、差別など、法を守るはずの裁判所に潜む闇を暴き出す姿勢は、製作から40年以上経った現在でも鋭い社会的メッセージを放っています。

技術的な魅力

・映像: ケンパーによる撮影は、暗く閉鎖的な拘置所から威厳あふれる法廷まで、場面ごとの雰囲気を巧みに表現し、登場人物の心理状態を映像で語っています。

特に法廷での対決シーンは、カメラワークと照明によって緊張感を高めています。

・音響: Jazz奏者として名高いデイブ・グルーシンの音楽は、物語の展開に合わせて絶妙に感情を誘導します。

特に主人公の葛藤が描かれるシーンでは心理描写を深めています。

・演出: 「夜の大走査線」「ハリケーン」などで知られる社会派のノーマン・ジュイソン監督の手腕は見事です。

登場人物の細かな心理描写と社会的テーマを織り込みながら、エンターテイメント作品としても一級の仕上がりです。

撮影秘話と裏話

・アル・パチーノは、役作りのため実際の弁護士事務所で1週間過ごしています。

法廷の台詞をすべて自力で覚え、終盤のモノローグはワンテイク!で撮影されたと伝えられています。

・ジュイソン監督は、脚本の改訂に際し、現役の法律家の意見を取り入れるなど、リアリティに強くこだわりました。

・法廷セットは実在のボルチモア裁判所を模して制作し、実際の判事がエキストラ参加しています。

・映画のクレジットには、リー・ストラスバーグの名前があります。

この方は演技指導の大御所で、その指導法は”ストラスバーグ・メソッド”として有名で、多くの俳優が師事しています。

マーロン・ブランド、ダスティン・ホフマン、ポール・ニューマン、ジャック・ニコルソン、そしてアル・パチーノやロバート・デ・ニーロ…等々、師事した俳優としてはハリウッドの名優が数多く連なっています。

ご本人の映画出演は少ないのですが、その中の一作が本作であり、同じパチーノ主演の「ゴッド・ファーザーPart 2」(ちなみに、こちらはデ・ニーロも出ています)。

自分の弟子の中でも、パチーノやデニーロはお気に入りだったのでしょうね。

総合評価

批評家からは「法廷ドラマの傑作」「社会派映画としての意義が大きい」と高く評価される一方、「やや図式的な悪役描写」という指摘もありました。

しかし、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされるなど、その作品性は広く認められています。

1970年代末から80年代初頭という、アメリカ社会が変革期を迎えていた時代に製作された本作は、司法制度の在り方や権力の乱用について問いかける重要な作品として映画史に位置づけられています。

法と正義の乖離という普遍的なテーマは、現代の映画テーマとしても不変であり、今日でも色あせることのない作品となっています。

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