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映像美とナスターシャ・キンスキーの存在感
イギリスの文豪トーマス・ハーディの小説『テス』を映画化した作品で、この映画の最大の魅力は、その映像美にあります。
イギリスの田園風景がまるで絵画のように切り取られており、光と影のコントラスト、自然の雄大さが、テスの運命をより際立たせています。
また、ポランスキー監督は大げさな演出をせず、登場人物たちの感情を静かに、しかし力強く映し出しています。
ナスターシャ・キンスキーの演技は見事で、テスの純粋さ、強さ、そして脆さを視線や表情で絶妙に表現し、言葉以上の感情を伝えてきます。
共演のピーター・ファースやリー・ローソンも、作品の世界観を壊すことなく、リアリティのある演技を見せています。
シャロン・テート事件と『テス』への影響
この映画を語るうえで外せないのが、ポランスキー監督の私生活と『テス』のつながりです。
『テス』は、ポランスキーにとって非常に特別な意味を持つ作品でした。それは、彼の妻であり、女優としても活躍していたシャロン・テートが生前「この小説を映画化してほしい」と彼に勧めていたからです。
しかし、そのシャロン・テートは、1969年、妊娠中にカルト集団「マンソン・ファミリー」によって殺害されました。
この事件はハリウッド史上最も衝撃的な犯罪の一つとして知られています。ポランスキーにとって、彼女の死は深い悲しみとトラウマをもたらし、その喪失感が『テス』の制作に影響を与えたことは間違いないでしょう。
彼はこの映画をシャロン・テートに捧げることを決意し、作品の冒頭には「For Sharon(シャロンへ)」という献辞が記されています。
ナスターシャ・キンスキーとの関係
その一方で、ポランスキー監督は、女性俳優に対して独特の嗜好を持ち、しばしば物議を醸してきました。
ナスターシャ・キンスキーとは、『テス』の制作以前から親しい関係にあったとされています。彼が彼女を映画の主演に抜擢したのは、彼女のミステリアスな美貌と個性的な存在感にも強く惹かれていたからでしょう。
しかし、ポランスキーの女性関係について語る際、彼のスキャンダルを無視することはできません。
1977年、彼は13歳の少女への性的暴行容疑で逮捕され、その後アメリカを離れて国外逃亡を続けています。
この事件は、彼のキャリアは大きな影を落とすこととなりました。
(そのため、今でもアメリカには入国できず、「戦場のピアニスト」のアカデミー賞の監督賞受賞に際しても登壇していません)
ナスターシャ・キンスキー自身も、若い頃にポランスキーからアプローチを受けたことをのちに語っていますが、彼女は彼と恋愛関係にはならなかったと主張しています。
『テス』の評価とポランスキーの影
『テス』は公開当時、批評家から高い評価を受けましたが、アメリカでは裁判を避け続けており、映画界における彼の評価は賛否が分かれるものとなりました。
映画そのものは、壮大な映像美とキンスキーの名演技により、今でも名作として語り継がれています。
しかし、ポランスキーという人物のスキャンダルが、作品の評価に影を落とし続けているのもまた事実です。
彼の私生活と映画制作が複雑に絡み合うことで、『テス』は単なる文芸映画の枠を超えた、ポランスキー自身の悲しみや葛藤が投影された作品となったのかもしれません。
彼の芸術の才能と私生活の問題行為は、観客に「作品と作者をどう切り分けて、その芸術作品を享受するか?」という永遠の課題を投げかけています。